8/20/2008

「2020年の日本人」その2

 著者の松谷氏は、日本の工業生産品の競争力は薄利多売に求められてきて、それは労働分配率が低く抑えてきたからだが、それができたのは、生活(必要最少)給の考えからだという。これからは付加価値の高い製品をそれなりの高い値段で売り、利益の再投資分を給与により多く回し、最少以上の豊かな生活を取り戻すべきだ、としている。
 文痴がおかしいと思うのは、「薄利多売」が日本製品の競争力、の部分だ。薄利多売は中国製品の間違いでないのか。日本製のものは技術力に裏打ちされた確実な製品で、それなりのリーズナブルな価格で供給できたから、競争力があった(車、家電)。特殊な手工業品で高価格のものならば、欧州などで有名なものがある(スイス時計など)が、それらはあくまでも汎用品ではなく、趣味のものだったりする。これらに日本が生産対象を切り替えていくには、市場規模が小さすぎる。それとも日本が負けている情報分野なのか?ノキアの携帯、インテルのCPUなどがそれだが、これら最終製品にも日本製の素材・部品が高価格で組み込まれている(大前研一氏による) 。
 労働分配率を高めるといっても、グローバルな労働市場にある現在、日本企業だけが賃金を上げたら競争力がなくなってしまう。いま、中国人単純労働者に出来ない少し高度な労働を日本人がしているから、給与水準がそれなりに高くなっている。派遣労働者のうち単純労働しかできないものは中国人と同程度の低賃金にならざるを得ない。そうでなければ、中国で生産し輸入することになる。

0 件のコメント:

コメントを投稿