4/21/2008

後期高齢者医療保険別枠の不思議

後期高齢者(75歳以上)の医療保険制度を通称「長寿医療制度」と改めるのは枝葉末節のことだ。
問題は、後期高齢者だけの制度を別立させることの是非だ。本人拠出を新たに設け、国費補助は50%、若年の保険から40%の拠出を受け、いままでゼロだったものをそれでも10%に抑えるという。単一市町村では収支にばらつきが生じすぎるので、都道府県単位の広域連合に運営を広げるという。将来の赤字に備え、よく考えたものだと思う。
しかし、問題はこれでは解決しない。過剰医療、それも後期高齢者はどうしても病気がちなので、とくにその世代への「過」過剰の医療が是正されなければ、「備えた」ことにはならない。後期高齢者だけを別枠にして、さあ独立してやってご覧、と言ったって、そこに赤字が移るだけで、全体合計では何も変わらない。
過剰治療の医者も問題だが、受ける高齢者だって、本人拠出あるいは窓口負担の額はなんのその、少しでも健康に不安があれば病院に駆けつける。その金も暇も十分ある(若い人は病気がちでも医者に行く時間がない)。保険を払っているのだから医者に行かないと損だ、という保険制度の根幹を崩す考えが日本人にはある。健康な人が医者にかからない、というのが保険制度の前提だ。
窓口負担をこの別枠制度の収支をとれるまでに割合をアップしなければならないだろう。しかし、そうすれば、健康な老人はこの制度から脱退し(できないが)、民間医療保険のほうに移行するかもしれない。民間のほうが健康非健康での査定をきめ細かくできるのかもしれない。

米国の大統領選挙では国民皆保険が争点になっている。国民間の不公平感がもともとあるから、医療保険制度は最初から成立しないのだろう。我が国もこれからそうなるのかもしれない。

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